黒焼き玄米の知られざる力
大正時代から昭和の初期に書かれたと思われる『黒焼き療法五百種』という本の中で、田中吉佐衛門という医学博士が次のように述べている。
「いわゆる黒焼きは、・・・(中略)・・・乾溜物すなわちタールというような複雑な化合物を含んでいるのはもちろん、なほ、加熱によって変化しかけた諸種の有機物質も含んでいることは容易に想像できます。
恐らく、かかる変成した物質の中には、いかに精密に分析しても化学的には判らない物質も多分に含んでいるかもしれないわけであります。特殊の薬種(動物・植物)の黒焼きが特殊の病気に効く、といった事実から考えますと、右に述べましたような、化学的に証明できないような一種の物質を含んでいると考えて、一向差仕えないはずであります。単に、炭素とかカルシウムとか、タール様物質とかに限らないと考えていいでしょう。
したがって、黒焼きが効くということは、それが効いた事実だけでたくさんで、その成分がわからないという理由で、これを一笑に附することはつつしまねばなりません」
このように、これまで、黒焼きの研究は薬学畑ではダブー視されてきた分野である。
なぜなら、薬効々果の証明が困難だからである。しかし、その効果は、うまく使えばなかなかすばらしいものがあるのもまた、たしかである。
どの病気にどの黒焼きを用いるかは、まさに長年の経験からくる統計に基づくものであったろうと思われる。なぜ効くのか、という理屈は後でついてくることになる。要は、効けばいいのだから。
黒焼き玄米は玄神として知られ昔からガンに効くといわれていた。
玄米以外にもさまざまな穀物や動植物が、黒焼きにすることで、もとの物質とは異なった薬効を発揮しているからおもしろい。
有名なところでは、梅干を黒焼きにすると下痢止めになるというし、昆布の黒焼きは気管支ゼンソクに効果があるといわれる。その他、髪の毛の黒焼きは止血作用、ナスの黒焼きは利尿、ノビルの黒焼きは扁桃腺炎、ウナギの黒焼きは肺結核、梅の核の黒焼きは腫れ物、といった具合である。
黒焼きは、焼かれる物質によってこのように効果が違ってくる。ではなぜ違うのかとなると、どうもよくわからない。
黒焼きをしていくと、元の物質から脂肪とタンパク質のかなりの量が失われ、多く残るのは炭水化物である。黒焼きとは、その成分のほとんどが炭水化物であり、加えて非常に少量のミネラル、ビタミンが残されたものである。こうした成分のわずかな差が、薬効々果を著しく変えるというのも、不思議といえば不思議である。
だが長年の経験というのは大したもので、それぞれの疾患に対応して、これでなければという黒焼きが確かにあるようなのだ。そして、それが今なお、風化することなくおおっぴらにではないにしても、たくさんの人々に支持され利用され続けていることを考えれば、その薬効効果は疑いようがないだろう。
黒焼き玄米は根気さえあれば、誰でも手軽に作られるため、健康のためにうまく利用していきましょう。
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